2010.06/19 [Sat]
映画『デジャヴ』
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★★★★☆
もし誰も信じるはずのない、重大な秘密を握ったらどうする?
543名もの犠牲者を出した、凄惨なフェリー爆破事件。捜査官ダグは、手がかりを握る一人の女性の遺体を見た瞬間、強烈な“デジャヴ”に襲われた。彼は特別捜査班の一員として、政府が極秘に開発した【タイム・ウィンドウ】と呼ばれる映像装置を見せられる。その正体は、現在時間から《4日と6時間前》の映像を自由に見ることができる、驚くべき監視システムだった!まるで生きているかのように美しい彼女の姿を見続けるうちに、ダグは再びデジャヴを感じ、さらに「彼女を救いたい」と強く願うようになる……。やがて、《4日と6時間前》の過去と現在をめぐる《驚愕の真実》が明かされる。果たして、彼は“すでに殺されている女性”を救い出し、“すでに起こってしまった爆破事件”を防ぐことができるのか? (2006年 アメリカ)
地上波で放送があったので視聴。
いやぁ“時間モノ”にハズレなし――洋画は『オーロラの彼方へ』、邦画では『ジュブナイル』がいちばん好きな映画という時間モノ大好き人間としては、設定を聞いただけでもう期待してしまうのですが、予想に違わぬ面白さで尚且つ予想を裏切る面白さでした。
過去の映像を覗きながらの、本来いない人物を相手どったカーチェイスなど、斬新な発想もなかなか。
さてこの映画、見ている最中は脳みそをフルで動かしていないと完全に置いていかれます。そのくせ展開がスピーディーだから立ち止まって考えている暇もないというタチの悪さ。良い意味で、ですよ。できることなら一時停止と巻き戻しが可能なDVD或いは録画での視聴を強くオススメします。間違っても映画館で観てはいけません。良い意味で、ですよ(念押し)
この作品の上手さは時間モノという点を上手く利用して、過去を変えることはできるのか――もっと具体的にいえば“この作品内における時間の扱い”がどこにあるかを本当に最後の最後まで、はっきりと示していなかった点にあります。つまり、 『スター・トレック(ST11)』のような並行世界容認型なのか、改変込みで現在がある過去は変えられない型なのか、或いは過去を変えることは可能で、過去が変わると既にある現在が消滅する一本線型なのか、です。
実験経験が乏しいというのもありますが、物語が進む中でここが不明なものとされているために、クライマックスまでどうなるかわからない、どう転んでもおかしくないという緊張感を生んでいます。
(以下、ネタバレあり)
結論としては本作では過去は変えられるというスタンスをとっていました。きちんと見ていないと割と落としてしまう恐れがあるのですけど、そもそもこの『デジャヴ』で展開されていた“現在”の物語自体が既に1回目の改変に失敗した結果生まれた、2回目の世界なんですよね。この映画ではそのプロセスを丸々カットして汲み取ってくれとばかりに至るところに伏線を残しています。
最もわかりやすいのがダグがタイムスリップ前に言った「2回目だとしたら?」のセリフです。テンポの速さに失念してしまいがちですが、ここで原点に立ち返って考えてみると“クレアが死亡しているにも関わらず、ダグがタイムスリップした形跡が残されている”ことに気付かされます。本作のスタンスでは過去の改変による未来の変動が可能なので、仮にこれが1回目だとしたらこの状況は極めて不自然です。なぜならタイムスリップが“成功”している以上、クレアは生きているハズだし、そうでなければタイムスリップがあったこと自体がおかしい。過去への介入によって未来が変わるのなら1回目はどう考えても改変されていない状況であるはずだからです。
図にするとこんな感じ。
1回目(クレア死亡、フェリー爆破⇒そもそもの事件)=最初の時系列、未来からの介入はなし
↓
↓ダグ 過去へ
↓
2回目(クレア死亡、フェリー爆破、1回目のダグ死亡⇒改変失敗)=映画で描かれた“現在”
↓ クレアの自宅のダグ来訪の証拠は過去(2回目)に戻った“1回目のダグ”によるもの
↓ メッセージは自分が失敗したときのために“2回目のダグ”へ宛てたもの
↓
↓ダグ 過去へ
↓
3回目(クレア生存、フェリー爆破阻止、2回目のダグ死亡⇒改変成功)=映画でダグが覗き、遡った“過去”
↓
↓
ラスト=3回目の改変の延長線上
ここでポイントなのが本作における過去へのタイムスリップは決してループ構造ではない、ということ。
改変を繰り返しながら先へ先へと新しい路をつくっていくわけです。
これだけの内容を見ながら整理するのははっきり言ってかなり困難。録画しといて良かった……。
最後に。タイトルの「デジャヴ」というフレーズ、あらすじにある部分での描写では正直なところ違和感程度で、あってないようなものだったのですが、ラストのやりとりでようやくしっくりきました。
最後、失意のクレアの前に現れたダグの「前にあったことある?」のセリフ。タイトルの「デジャヴ」はまさにここの会話のみを指しており、他の部分に結びつけるのは間違いでしょう。あのDVDのあらすじ書いた人間、絶対映画見てないな。
現象としての「デジャヴ」ではなく、物語に流れる情緒としての「デジャヴ」――このタイトルの付け方、非常に文学的で素敵だと思います。
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しっかりと理解が出来た満足感も加わりました
ありがとうございます( ̄∇ ̄);