2010.03/10 [Wed]
柳広司『ダブル・ジョーカー』
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★★★☆☆
同じカードは二枚も要らない。どちらかがスペアだ
結城中佐率いる“D機関”の暗躍の陰で、もう一つの秘密諜報組織“風機関”が設立された。食うか、食われるか。D機関の追い落としを謀る風機関に対して、結城中佐が放った驚愕の一手とは――?表題作「ダブル・ジョーカー」ほか、“魔術師”のコードネームで伝説となったスパイ時代の結城を描く「柩」など、5編を収録。
「ジョーカー・ゲーム」第2作。
前作は読んでみたい誘惑に駆られてハードカーバーを買ってしまいましたが、結論としては確かに楽しめたんだけど高い金額出して買うほどじゃなかったんですね。けれど続きは読んでみたい。となると「買いたくなければ借りれば良いじゃない」というアントワネット論法の出番です。図書館は予約が190件も入っていてとても借りられる状況ではありませんでしたが、幸いにして私の住む地域には図書館の他にも本の貸し出しを行っている公共施設がありまして。意外とマイナーなそこを利用して見事入手(?)致しました。
というか有川浩の『植物図鑑』とかも置いてたんですよ。普通に本屋大賞候補じゃないですか。なんという穴場!
今度、借りてこようっと。
で、読了しました『ダブル・ジョーカー』。
前作『ジョーカー・ゲーム』が暗躍するD機関のスパイ本人たちにスポットを当てていたのに対し、今作はスパイと張り合う側の人間、或いはその周りの人間が各話で主役を務めています。ですがここが本作最大の難点というべきかもしれません。
表題作「ダブル・ジョーカー」は新たに設立された第二のスパイ機関とD機関の攻防ということですが、まぁ結城中佐とD機関が出し抜かれるなんてことは万に一つもあるわけがない、と前作を通読した読者にはわかり切っていることで、緊迫感も何もないんですよね。他の章も大体にして同様。D機関の勝利が確定している中、如何にして主役たちが超然としたスパイの噛ませになるかが描かれているだけのようでイマイチ物足りない。D機関が凄いのは良い加減わかったから!みたいな。面白いには面白いのですが、二冊目にして既に物語が定型と化した感がなくもないです。
(以下、多少のネタバレ)
そんな超絶なるスパイたちの物語も終章「ブラック・バード」で終焉の時を迎えます。第二次世界大戦の開幕。柳さんの小説的に評するのなら、戦争という大波の前では如何に超人然としたスパイたちも一介の人間風情に過ぎない、それを前にしてできることなど何もない。と、そんな感じでしょうか。
しかし納得がいかないのが「柩」。まるで自分の死を予期していたかのような不慮の事故によるスパイの最期。これは予定調和を通り越してムリがあり過ぎます。なんで引き継ぎ行為が行われたこと前提なの?虫の知らせ?相手を出し抜けたのはたまたまにも程があるし、これはミステリとしては許容できないレベル。
そしてこれが昨年度本ミスでベスト10ランクインというのも重ねて納得できませんでした。もっと他に良かったのあるでしょ、まほろさんの『探偵小説』シリーズとか、水生大海の『少女たちの羅針盤』とかさぁ。どんだけ見る目ないんだよ、投票者。
――おっと、本ミスの悪口になってしまったのでこの辺で。
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NoTitle
超人的なスパイたちの活躍に前作以上に心躍らされました。
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