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300冊の積読本もなんのその、本や映画の感想などをつらつらと述べてみたり。

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周木律『眼球堂の殺人 ~The Book~』

眼球堂の殺人 ~The Book~ (講談社ノベルス)眼球堂の殺人 ~The Book~ (講談社ノベルス)
周木 律

講談社 2013-04-04
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★★★☆☆
……ザ・ブックというのは、この世に存在する無数の定理について、そのすべてが書かれた本だ。
記載されている証明は無限に及び、したがってページも無限に及ぶ

天才建築家・驫木煬が山奥に建てた巨大な私邸“眼球堂”。そこに招待された、各界で才能を発揮している著名人たちと、放浪の数学者・十和田只人。彼を追い、眼球堂へと赴いたライター陸奥藍子を待っていたのは、奇妙な建物、不穏な夕食会、狂気に取りつかれた驫木……そして奇想天外な状況での変死体。この世界のすべての定理が描かれた神の書『The Book』を探し求める十和田は、一連の事件の「真実」を「証明」できるのか?


第47回メフィスト賞受賞作。
 おまっとさんでした! メフィスト賞受賞作3ヶ月連続刊行の1冊目は周木律『眼球堂の殺人』。狂気の建築家が設計した山奥の奇妙な館。集められた天才たち。閉鎖状況で巻き起こる連続殺人。これぞ本格、新本格といった踊り文句に、ミステリ読みとしては否が応にも反応してしまいます。
 しかも、今回からはメフィストの編集長が『恋都の狐さん』という謎チョイスをかましてくれたマダムから元文三のLへと交代したこともあって、期待度さらに二倍増し。最近はメフィスト賞らしさがなくなってきている、との座談会での発言も心強く、メフィスト賞の今後の方向性を占う意味も含め、とにかく楽しみにしていた作品なのです。

 あらすじからもわかるように、本作は王道直球の新本格路線。読んでいて作者の好きだったミステリ小説、作者の書きたいミステリ小説というものがひしひしと伝わってきます。しかしながら、それがあまりにもスタンダードでオーソドックスなのが悩みどころでしょう。
 舞台設定にストーリー展開、キャラクター配置、ガジェットの活用、事件の真相や落としどころまで、あまりにもありきたりで独自性がない。いつかどこかで見た話以上のものがないのです。
 21世紀も10年以上過ぎた2013年の世の中に、敢えてこの“古臭い”ともいえる新本格を新人のデビュー作として出す意味、メフィスト賞を与える必然性が果たしてあったのかが甚だ疑問です。メフィスト賞は自らムーブメントを作っていくような小説を送り出す賞じゃないの? ミステリはいつまでも過去に縋って、留まっているような状態で良いの?と強く感じさせられました。

 作品の出来は決して悪くありません。面白いか、つまらないかでいえば確かに楽しめたし、図表の処理の仕方など一部に反則とまでは言わないまでも腑に落ちない箇所があるにしろ(個人的には、下手に隠し立てしない方が真相を明かされた際の衝撃は大きくなったと思います)、及第点は取れています。
 けれど、これがメフィスト賞に相応しい作品かというと、私は否と答えたい。多作の著者さんのようなので、とりあえずは夏発売の次巻を待つことにします。
 座談会で俎上に載せられていた煙突館(?)の話は是非とも出してくれないかなー。


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Comment

はじめまして。 

この間ブログを見つけまして拝見させていただいております。私も「趣味は読書」と言って「どんな本」と聞かれると2回に1回くらい「主に講談社」とか言っています。講談社回数券10枚つづりとかがあったら買いたいくらい
  • posted by かと・うさとし 
  • URL 
  • 2013.05/07 05:31分 
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訪問ありがとうございます 

かと・うさとしさん、はじめまして。

「主に講談社」だなんて返されると、大抵の人はぽかんでしょうね。でも、それが良い!
講談社は講談社だけの持ち味に溢れているんですよね!

家の本棚に講談社ノベルスの犬が増えるたび、嬉しくなります。

講談社回数券はぜひ欲しいですねえ。
新刊用と既刊用に、それぞれ10枚ずつくらい常備しておきたいところです。
  • posted by はろーすみす 
  • URL 
  • 2013.05/07 20:58分 
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プロフィール

はろーすみす

Author:はろーすみす
シリーズものも平気で数年寝かせる積読家。本格ミステリとスター・ウォーズ小説を中心に読み漁り、新刊・話題作はあまり追っていません。

好きなミステリ作家は古野まほろ、はやみねかおる、西尾維新、霧舎巧。
ジャンル外では築山桂と小川一水。
講談社ノベルスをこよなく愛す特ヲタ。

当ブログはリンクフリーです。
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1.トリプルプレイ助悪郎(2007年刊)   2.名探偵に薔薇を(1998年刊)             3.化物語(2006年刊)          4.時砂の王(2007年刊)                  5.天帝の愛でたまう孤島(2007年)

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